2026年02月28日
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随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。ハルメクeventsでは、参加者が提出した作品の中から山本さんが選んだ「みなさんに読んでもらいたい作品」を公開しています。
第11期2回目のテーマは「まるで」。玉木裕子さんの作品「窓の中」と山本さんの講評です。
並んだ大きな丸窓の中は、服やタオルでいっぱいだ。
どの機械もひたすら自分の仕事をだれも見ていなくてもこなしている。コインランドリーは忙しい。
となりでは、おじさんが一枚ずつ洗濯物をとり出してカゴに入れている。出てくるわ、出てくるわ。
どこかで見たような~。
運動会の球入れ競争で、球をかぞえる。あのときだ。
いーち、にーぃ、さーん。
かぞえる声を、手をギュッと握り、ドキドキしながらきいていた。今、となりの洗濯物をかぞえたりはしないけど。
くるくる回る服を見ていたら、わたしの頭の中でもあんなふうに狭いまるい世界で、あれこれがくるくるまわっているんだ。夕食のおかずのこと。迷っている歯医者の予約。ちょっと気を遣う手紙の返事。
落ちついて少し離れてみれば、そう……小さな問題で、たいしたことではないのかも……ね。だから、あわてずにひとつずつ片づければいいんだ。
そのとき、スイッチがとまった。うぃーん。
機械のため息。おつかれさまと言いたくなる。
気になっていた用事がひとつおわった。
とり出したふかふかの布団を見ていたら、シフォンケーキが食べたくなった。
帰るときふり返ると、水玉もようの小さなワンピースが窓の中で側転している。
「玉木裕子」のスタイルは、詩的であることです。
そのリズムと、独特の表現、場面の切りとり方を、いつもたのしみにしています。このたびの「窓の中」も、おお、こうきたか……と感心させられました。
「書きだし」も素敵ですが、この作品は、「結び」に注目しましょう。
これが場面の切りとり方、のうまさです。お見事。