2026年09月30日

随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。ハルメクeventsでは、第12期にご参加のみなさんが提出した作品の中から山本さんが選んだ「みなさんに読んでもらいたい作品」を公開しています。
第12期3回目のテーマは「毒」。大島菜澄さんの作品「八月」と山本さんの講評です。
ある夏の日、いつものように遊びに行った友人宅でのことだった。
それは、透明なグラスに注がれた薄紫色の液体。
グレープジュースとは明らかに違うとわかる香りと、毒を連想したくなる色。
すすめられるまま、おそるおそる口にしてみた。
するとどうだろう。鼻に抜ける何とも言えないさわやかな香りとくせになりそうな味わい。これが赤紫蘇の葉を使った「紫蘇ジュース」との出合いだった。
その日からたちまち魅了され、毎年手作りするようになった。
今年も紫蘇ジュースの季節がやってきた。
ところが、いつもなら難なく手に入る赤紫蘇の葉が、近所のどの店に行っても見つけることができない。
例年、赤紫蘇の葉が市場に出回る旬の時期は、6月上旬から7月中旬頃のほんのわずかな期間。この時期を逃すと紫蘇ジュースを作ることができなくなってしまう。
スーパーの店員さんに聞いても、「そういえば、いつもならありますよね」の一言。
紫蘇ジュースを教えてくれた友人に聞くと、「ないならネットスーパーか何かで頼めばどう?」と。
しかしいろいろのサイトを見て回っても、「これ」というのが見つからない。
やはり、私は自ら手に取って実物を確かめて買うのが好きなんだよなあ……と、スーパーに行くたびに運命の出会いを求める日々が続く。
気が付けば8月を迎えようとしていた。
「夏休みは、どこへ行こうか」
夏休みは必ずどこかへ出かける我が家の楽しみは、道の駅めぐり。
毎年のように道の駅があちらこちらに増えているから行く先に困らない。楽しみなのは、その場所にしかない、スイーツ系の「限定品」である。道の駅を見つけるたびに立ち寄っては、「限定品」を楽しんでいた。
そんな中、いくつめかの道の駅でのことだった。
私の足はまっすぐ農産物コーナーへと向かっていた。
入口にはいってすぐ。梨の横に無造作に積まれている紫色の葉が入った袋に目がとまった。
今は、8月だよね? 季節外れ? 味は大丈夫? 頭の中をあれこれ考えがめぐったが、そんなことは、どうでもよい。
私は心の中でガッツポーズを取り、赤紫蘇の葉をかかえる。
「紫蘇ジュース」がいいらしいとは、よく聞き、自分でもいつかと、思っていたのです。思っていてつくらないできました。
でも、この作品を読んで決めています。
来年、ふさわしい時期に赤紫蘇を求めて「紫蘇ジュース」をつくろうと。
「紫蘇ジュース」のような主人公を選ぶの、とてもいいでしょう? 脇役として登場する、初めて紫蘇ジュースを飲ませてくれた友人、スーパーの店員、道の駅も、効いています。
文中の「肝」と思えるふたつをご紹介しましょう。
やはり、私は自ら手に取って実物を確かめて買うのが好きなんだよなあ……。
そんなことは、どうでもよい。
ここを読んで、くらっとしました。
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。