2026年05月31日
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随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。ハルメクeventsでは、参加者が提出した作品の中から山本さんが選んだ「みなさんに読んでもらいたい作品」を公開しています。
第11期5回目のテーマは「100字エッセー」。参加者のみなさんに100字で成立する短いエッセーを5作執筆いただきました。山本先生がお一人につき1作を選び、第11期の展覧会としてご紹介します。
●浅井 京子
泳ぐことが一番のストレス解消。何も考えずのバックバタ足、ときどき進まないこともある。目標のバタフライは、バタフライもどきのまま、小指から水面に出すと腕まわしがきれいというがとても無理。我流で泳ぐ。
●石川 久子
2月、伸びきってしまった夏みかんの木を剪定した。剪定とは名ばかり。通りの交通標識がみえなくなるので短く、短くしたのだ。翌年実がならないのを覚悟で。4月、ふと見ると新芽の間に蕾がいっぱい。うれしくなる。
●大井 洋子
は行は笑う。ははは、ひひひ、ふふふ、へへへ、ほほほ。は行は仲間がいっぱい。賑やかだ。楽しそう。ばびぶべぼ、ぱぴぷぺぽ。丸がついているのは、は行だけ。明るく見える。良いよ、良いねと褒められているみたい。
●大竹 昌子
そろそろ9年になる、「フィッツミー」は俗に言う主婦の三十分ジムで、週に2、3回通っている。ひと汗かいて、コーチや周りの人と喋る。階下のスーパーで買い物ついでにご褒美のアイスを買って自転車で帰宅する。
●小野 みゆき
義母の作るしそ巻きは、味の濃さが絶妙で、家中みんな大好きだった。だけど、義母は、料理ができなくなった。ある日偶然、似た味のを見つけ、嬉しくて、みんなで食べた。義母がそれを食べたら、何と言うかしら。
●川合 紀子
睡蓮が好きで、庭に7つの鉢がある。春になってメダカが泳ぎはじめた。冬の間は、庭の方にいてめったに姿をみせない。数えると全員無事。水面に丸い葉が出てきた。夏の朝にひっそりと咲く睡蓮の花が楽しみです。
●釘宮 加代子
第4火曜日午後1時。「お元気でしたか」で始まる我家でのご近所さんとのおしゃべり会。時の流れに取り残されないように、自らの心を置き去りにしないように、情報交換しつつ笑いと生きる勇気を共有する。「また来月ね」
●久保田 由美子
近所の街路樹の根元に毎年スギナが生える所がある。それならツクシがあるはずだがそれはなかなか見ない。出る時期に差があるものなのか不勉強で知らないが、見ない年も多い。今年は2本も見つけた。ささやかな喜び。
●けらけら
一期一会の者同士が調理台を囲み、協力し合って目的に向かう作業は意外と楽しい。与えられたレシピと講師のデモンストレーションを見聞きしながら、完成を目指す! 料理教室は満腹と満足が得られる場所である。
●堺 なおこ
90歳の母が「これからの人生プランを考えたの」と言った。69歳の私は「これからの人生が不安なの」と返した。母にとって長寿は「結果」、私にとっては「憂慮」。「お互いこんなことを話す日が来るなんてね」と笑いあった。
●坂本 倫美
返ってきた言葉にイラッとする。すぐさま否定文が頭にいくつもうかぶ。いかん、思わず口からNGワードがとびだしそうになる。あわてて深く息を吸う。一番近い同居家族のもと、まだまだ修行中です。この年になっても。
●杉本 とも子
雨の日も好きだ。雨音は心を穏やかにする。草花たちが生き生きとなる。貯水池の取水止め、節水の呼びかけがニュースになっていた。実は私は「晴女」。肩身の狭い思いをしている。「雨乞い」の術を教えてください。
●髙橋 樹
前方、対向車もいない、快適なドライブ。坂をくだっているとまるい、うずまきがみえる。丘の上の公園から流れてきたさくらだ。細かいはなびらが舞い、その中を走り抜けた。わたしの後ろにも花びらが。……舞った。
●竹内 薫
「今幸せ?」ときどき自分に問うてみる。部屋の隅で泣いてた幼いわたしの横に行って「あなたは悪くないよ」と励ましてあげたい。大人になったら、優しい夫と3人のこどもに巡り会えるよ、「わたしは今幸せ」と耳もとでささやいちゃおうか。
●玉木 裕子
そっと窓を少し開けてみる。外はおだやかな新緑の森の中。スーッと細く風が入ってくる。ティーカップに挿した花や葉をゆらす。犬が天井に鼻を向けて、くんくん空気を思いきり吸いこんでいる。うん、いい風がくる。
●ヒトリシズカ
高原の貴婦人がやってきた。キベリタテハという蝶である。家の犬ばしりのコンクリートにとまっていた。成虫の姿で越冬するとのことなので、4月の暖かさに、ようやく隠れ家から出てきたのだろうか。初の出会いだ。
●富山 芳子
ロンドン行きの特急列車に乗車。乗客はまばらだ。ふいに後ろから「日本人ですよね」と声を掛けられる。新宿に長くいたというインド系の顔をしたその男性は、私が座る際「よいしょ」と言ったという。
●長谷川 恵美子
大阪なんばの「なんばグランド花月」にはじめて行く。お目あては「やすとも」こと海原やすよ・ともこ姉妹の漫才。大袈裟なところがなく、日頃から2人でこんな風に会話をして笑い合っているのだろうと感じる温かさ。たのしい‼
●福田 敦子
もう70才なのか、まだ70才なのか。自分の都合のよいように、「もう」と「まだ」を使い分けている。「会うためには、お互い健康でなければね」と、家族を看護している友人のひと言。まだ70才。明日友人に会いにゆく。
●南川 千鶴子
歯医者に行くと、「歯を食いしばる癖があり、そのため歯が痛むのです」と言われた。食いしばる? 無意識に。意識して過ごしてみると、なるほど。無くて七癖とはよく言った。気をつけよう。
●宮迫 綾子
小春日和。玄関のドアを開けると、向かいの田んぼの、高さのある排水マスの上に、黒猫がいた。あたかもキャットタワーで休んでいるかのよう。どこか遠くを見ている。猫も、もの思いにふけることがあるのだろうか。
●ヤマザキ トモコ
突然その日はやってきた。「きょうが、最終回」と娘。あれが最後のお弁当になっちゃった。卵焼きが入ったいつも通りのもの。朝の忙しさから解放されたと、ほっとするはずなのに。まだ作りたいなとも思っちゃう。
●米澤 千枝
気に入っていた近所の本屋が閉店することに。店員さんは「近くなら〇〇書店さんがありますよ」と言うが、そういうことじゃないんです。大型書店とは違う、ここのセレクトが好きだった。親友と離れるような寂しさ。
(掲載は五十音順/敬称略)